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2013年1月 アーカイブ

2013年1月29日

2012 芸術評論 講評

今年最後に、新しいネタとして「パスティーシュ」という課題を出しました。最後の時間だったので、みんなの作品を講評をする機会がありませんでした。
課題は、任意の作家の作風をまねて、自画像を描けというものです。当初は、作家の範囲を「画家」と考えていたのですが、あえてマンガ家を含めるように修正出題しました。

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今回、真似る作家として漫画家を含めることとしました。私はこれについて、重大なことを再認識させられました。
画像は提出された作品です。学生は大変上手に描いています。
しかし、多くの場合、作品のなかの登場人物にそっくりになってしまいました。パスティーシュは作品そのものをパクるわけではなく、作風を似せるのですから、趣旨から外れてしまったわけです。
しかし、これは学生のせいではなく、マンガというメディアのもっている特質だと考えられます。ここは、私にとっても想定外の現象でした。
013_2.jpg
マンガは、視覚的な速記法のひとつです。つまり、抽象化に核心があります。今回のように、人間の顔であれば、顔の細かい差異を捨象して抽象化していくところにマンガの長所があります。
その反面で、抽象化されたことで、それぞれの人の細かい特徴や表情などが消えるという短所があります。マンガのなかにもたくさんのキャラクターが登場して違った顔をしているはずなのですが、「誰か風」が「○○という登場人物風」と相似形をなしているところが、落とし穴かもしれません。
同じビジュアル・アートであっても、差異を誇張していく「絵画」と正反対の特質をもっているのです。
今回、私がマンガ家を含めたのは失敗かもしれませんが、メディアの特質を再認識できたことは勉強でした。

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